痒疹・結節性痒疹
痒疹(ようしん)・結節性痒疹について
「虫刺されのような赤く硬いブツブツがなかなか治らない」
「かゆくて何度も掻いてしまい、皮膚が盛り上がってしまった」
このような症状が長引いている方は、痒疹(ようしん)、または結節性痒疹の可能性があります。
◆ 痒疹とは?
痒疹は、強いかゆみを伴う皮膚の炎症性疾患です。皮膚に赤いブツブツやしこり(結節)ができ、非常にかゆみが強いため掻き壊してしまうことが多く、慢性化しやすい病気です。
掻くことでさらに皮膚が硬くなり、治りにくくなる「かゆみの悪循環」が起きます。
◆ 結節性痒疹とは?
痒疹のなかでも、特に皮膚がゴツゴツと結節状(しこり状)に硬く盛り上がったタイプを「結節性痒疹(けっせつせいようしん)」と呼びます。
強いかゆみとともに、皮膚の色素沈着や厚みが残ることも多く、特に中年以降の方に多く見られるのが特徴です。
◆ 小児や高齢者における痒疹
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小児の痒疹は、虫刺されを掻き壊したあとに症状が続くことがあり、「乳児痒疹」「結節性痒疹様皮疹」などと呼ばれることもあります。アトピー性皮膚炎との関連も強く、早期の治療が大切です。
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高齢者では皮膚の乾燥やバリア機能の低下が引き金になって、慢性的にかゆみや痒疹が現れやすくなります。薬の影響や内科的な病気が背景にあることもあるため、幅広い視点での診断が必要です。
- 肝機能障害や腎機能障害などがある方では皮膚の掻痒が続きやすく、かいていると痒疹になってしまいます。
◆ 症状の特徴
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赤み、ブツブツ、しこり状の硬い皮疹
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強いかゆみにより掻き壊しやかさぶた、色素沈着
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肘、脚、背中、腰などに左右対称に出ることが多い
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慢性化・再発しやすく、治療に時間がかかることも
◆ 原因
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虫刺され、乾燥、アレルギー体質
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アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患
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糖尿病、腎疾患、肝疾患などの内臓の病気
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ストレス、睡眠不足などの生活要因
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特発性(原因不明)の場合もあります
◆ 痒疹・結節性痒疹の治療法
● ステロイド外用薬
強い炎症やかゆみを抑えるために使用します。硬くなった皮膚にはテープ剤や密封療法(ODT)を併用することもあります。
● 抗ヒスタミン薬(内服)
かゆみを抑える目的で処方します。眠気の少ないタイプもありますので、日中の活動に支障が出にくい薬も選べます。
● 生物学的製剤(注射治療)
従来の治療で効果が不十分な場合には、デュピルマブ(商品名:デュピクセント)、ネモリズマブ(商品名:ミチーガ)による治療が選択肢になります。
特にアトピー性皮膚炎を伴う結節性痒疹においては、高い効果が期待されます。
- 2型炎症のサイトカインIL-4とIL-13の働きを抑えることで効果を発揮します.
- すでにアトピー性皮膚炎の治療で実績があり、結節性痒疹にも保険適用で利用可能.
- 自己注射可能
- 2週に1回の皮下注射
- 15歳以上
- 結節性痒疹のかゆみを引き起こすサイトカインIL-31を標的とした生物学的製剤
- アトピー性皮膚炎にも有効で、近年結節性痒疹にも適応が広がりました.
- 自己注射可能
- 4週に1回の皮下注射
- 13歳以上
● その他の治療
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保湿剤の使用による皮膚バリアの補強
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免疫抑制剤、ステロイド内服など(重症例)
- 透析患者さんなどの掻痒に対しては非オピオイド系かゆみ抑制薬(κ受容体作動薬)(商品名レミッチ)
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寝ているときに包帯やチュビファーストやチュービコットなどを巻くなど
◆ よくあるご質問(Q&A)
Q:結節性痒疹は治りますか?
A:時間はかかることが多いですが、根気強く治療を続けることで症状は改善します。かゆみのコントロールと皮膚の保護がカギです。
Q:痒疹はアトピーと違うのですか?
A:痒疹とアトピー性皮膚炎は別の疾患ですが、併発することがあります。アトピーが背景にある痒疹は、より長引く傾向があります。
Q:治療にはどれくらいの期間がかかりますか?
A:軽症の場合は数週間~数ヶ月で改善することもありますが、慢性化した結節性痒疹では半年以上かかることもあります。
Q:生物学的製剤は誰でも使えますか?
A:基本的には他の治療で十分な効果が得られなかった中等症以上の方が対象となります。保険適用の条件などもありますので、診察時に詳しくご案内します。
◆ まとめ
痒疹・結節性痒疹は、かゆみによって生活の質(QOL)が大きく下がってしまう皮膚疾患です。
掻き壊しによる色素沈着や皮膚の変化が残る前に、できるだけ早い段階での治療が大切です。
「かゆみが長引いている」「ブツブツがなかなか治らない」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。