円形脱毛症
円形脱毛症とは 分類
円形脱毛症は何らかのきっかけによって毛を作る毛包という場所の周囲に炎症が起き、自分のリンパ球が毛包の組織を間違って攻撃してしまい、毛が抜けてしまう病気です。
脱毛症状は頭部に1個だけ、円形にあらわれることが多いですが、そのほか頭部に多発したり、眉毛や睫毛、もみあげ部や髭、体毛に生じるなど、身体のどの部分にも起きる可能性があります。
さらに、頭全体の毛(全頭型)、あるいは全身の全ての毛が抜け落ちる場合(汎発型)もあります。また稀ではありますが、頭髪の生え際のみが帯状に脱毛する場合がありこれを蛇行型といいます。全頭型、汎発型、蛇行型は通常の円形脱毛症より難治である傾向があります。
原因
よくストレスにより十円ハゲができたと聞くことがあるかと思います。実際には精神的ストレスにより脱毛が始まる患者さんもおられますが、多くはあきらかなストレスとは関係なく症状が始まります。ストレスがあまりないといれている乳幼児にも発症することがありますし、円形脱毛症の症状が出るのは一生に一度だけのこともあれば何度もくりかえし再発する場合もあります。また、血縁関係のある親兄弟などが発症することも珍しくありません。いまわかっている範囲でいうと、アトピー、甲状腺異常や膠原病との関連がいわれています。そのような”円形脱毛症になりやすい遺伝的体質”がある方に、ウイルス感染症や過度な肉体的精神的ストレス、出産、大きな手術、過激なダイエットなどをきっかけに発症すると考えられています。
治療
ステロイド局所注射、ステロイド外用療法、局所免疫療法(SADBEやDPCPを塗布)、液体窒素療法、紫外線療法、グリチルリチン・グリシン・DL−メチオニン配合剤錠の内服、カルプロニウム塩化物外用液、セファランチンの内服などがあります。また頭部面積の半分以上が脱毛するような広範囲脱毛の方にはJAK阻害薬という効果の高い薬が最近でてきました。12歳以上にリットフーロ、15歳以上にオルミエントを使用できます。
以上たくさん治療法がありますがこの中で当院でおこなっている治療法はステロイド外用療法、液体窒素療法、グリチルリチン・グリシン・DL−メチオニン配合剤錠(グリチロン配合錠)の内服、カルプロニウム塩化物外用液(フロジン液)、セファランチンの内服、ステロイド局所注射、JAK阻害薬の内服となります。JAK阻害薬の内服についてはまず近隣内科もしくはかかりつけ内科で血液検査や画像検査をしてからの導入となります。また、急速に広範囲に脱毛が進むような場合には近隣皮膚科へ紹介をおこない、入院のうえステロイドを点滴静注するステロイドパルス療法が行われる場合もあります。
円形脱毛症以外の脱毛
男性型脱毛や女性型脱毛はまったく原因が異なるので治療も異なります。AGAの詳しい説明はこちら。
そのほか、エリテマトーデスという膠原病の患者さんで脱毛が認められることがあります。エリテマトーデス自体の病勢をおさえる治療をすることが最も大事ですが、落ち着いたあとも生えてくるのに時間がかかる場合が多いのと、治療が遅れると脱毛部の皮膚が線維化して硬くなってしまうとそこからは永久に毛が生えなくなってしまいます(瘢痕性脱毛)。
また、毛の成長にはホルモンバランスやミネラルが関与しており、甲状腺機能低下症や亜鉛欠乏症などで脱毛を生じることがあります。
さらに、柔道やレスリングなどのコンタクトスポーツをしている方に起こりやすいケルスス禿瘡では、白癬菌が毛に感染して脱毛を生じ、時に同じチーム内で流行します。そのほか梅毒に伴う脱毛症などもあります。菌をやっつける外用薬や内服薬が必要になります。
またコロナ禍で有名になりましたが、コロナウイルスなどによる重症の感染症や、大きな手術、妊娠、過激なダイエットなどの後に、毛の抜けかわりが影響をうけ、抜け毛が増える休止期脱毛という現象も知られています。こちらに関しては基本的に無理をせず適度に休みながら規則正しい生活を送りながら生えるのを待つというのが治療です。そのあいだなるべくパーマやカラーリングなどの頭皮に負担のかかる行為は控えましょう。
激しい炎症が起こることによる脱毛では、永久に毛が生えない瘢痕性脱毛にならないように早期診断・早期治療が極めて重要です。脱毛に悩んでいる方は相談してくださいね。