蕁麻疹(じんましん)
じんましんの仕組み
じんましんが出ているとき、何が起こっているか。
皮膚の血管の周りのマスト細胞という細胞が何らかの刺激で顆粒を放出すると、血管が反応して蕁麻疹を生じます。顆粒の中に含まれるヒスタミンが、皮膚の血管に働くと血管を拡張し(→皮膚は赤くなる)、血漿成分を血管の外に漏れ出やすくします(→にじみ出ていると皮膚が盛り上がる)。またヒスタミンは痒み神経を刺激し、そのため蕁麻疹では痒みを伴います。
症状
皮膚に痒みやちくちく感を伴う発疹が突然生じ、数十分~数時間で治まりますが繰り返し場所を変えて発疹が起こる場合が多いです。じんましんは一過性で、通常は数時間から数日程度で治ることが多いですが、慢性的に続く場合もあります。
原因
ただし、すべての原因が明確にわかるわけではなく、「原因不明(特発性)」とされるケースも多くあります。
① 特発性じんましん(原因がわからない)
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急性じんましん(発症から6週間以内)
ウイルス感染(かぜなど)や軽微な食事・薬剤などが関与していることもありますが、原因ははっきりしないことがほとんどです。 -
慢性じんましん(6週間以上続く)
原因が特定できないまま長期間続くもの。多くの慢性じんましんは自己免疫的な仕組みが関係している可能性があり、体の中で自分の細胞を攻撃する抗体が肥満細胞を刺激してしまうことがあると考えられています。
② 誘発性じんましん(特定の刺激で起こる)
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物理性じんましん
・圧迫、こすれ(衣類、マスクなど)
・寒冷(冷たい風や水)
・温熱(お風呂、ホットパックなど)
・日光(紫外線)
・振動(電動工具など)
など、外部からの物理的な刺激によって誘発されるもの。 -
コリン性じんましん
運動・入浴・精神的緊張などにより体温が上昇したときに出る小さな発疹と強いかゆみが特徴です。若い男性に多く見られます。もし無汗性ならステロイドバルス療法というものが有効であることがあるので一定の病院へ紹介させていただきます。 -
アレルギー性じんましん
特定の食物(卵、乳製品、魚介類など)や薬剤(解熱鎮痛薬、抗生物質など)が原因で起こることがあります。
※アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応に注意が必要です。 -
接触性じんましん
ラテックス(ゴム手袋など)や動植物との接触など、皮膚に触れたものが原因で生じるじんましんです。
③ 感染やその他の疾患に伴うじんましん
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ウイルス感染(風邪、胃腸炎など)
特に子どもに多く、一時的に出ることがあります。 -
自己免疫疾患や甲状腺疾患などの内科的病気が背景にある場合もあります。
必要に応じて血液検査などでの精査が行われます。
原因におけるまとめ
🔍 じんましんの多くは「原因不明」で特定できないことが多い
🔍 明確な刺激で出るタイプもあり、日常生活で予防できることもある
🔍 症状の出方や頻度により、治療法や対策が変わります
治療
症状に合わせた治療を段階的に行います。
◆ 基本の治療:抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服
まずは、かゆみや膨疹の原因となる「ヒスタミン」などの物質の働きを抑える薬を使用します。
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抗ヒスタミン薬(第2世代)
眠気の少ないタイプが主流で、1日1~2回の内服で症状をコントロールします。例:ビラノア、アレグラ、アレロック、タリオン、ルパフィンなど -
抗アレルギー薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬など)
ヒスタミン以外の炎症物質にも作用するため、特に気管支喘息やアレルギー性鼻炎を伴う方に適しています。例:シングレア、オノンなど -
H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)
通常の抗ヒスタミン薬で不十分な場合に追加で用いられることがある薬です。例:プロテカジン、ガスターなど
◆ 難治性じんましんへの治療
通常の内服薬では改善が乏しい場合、「難治性じんましん」と判断され、より専門的な治療が選択されることがあります。
◎ ゾレア皮下注射(オマリズマブ)
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既存の治療で効果が不十分な慢性特発性じんましんに使用される注射薬です。
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アレルギーの原因となるIgE抗体の働きを抑えることで、発疹やかゆみを軽減します。
◎ デュピクセント(デュピルマブ)
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炎症の根本原因にアプローチする作用をもち、皮膚症状の改善を助けます。
- アトピーや喘息やCOPD、慢性副鼻腔炎などにも効果があるため、それら治療を行っている場合は主治医と相談していただくこととなります。
※注射治療を行う際には、症状の経過や他疾患との兼ね合いを見ながら、皮膚科専門医が慎重に判断します。
◆ じんましん治療のポイント
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原因が特定できない場合が多いため、「症状を出さない」ことを重視します。
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多くの場合、継続的な内服によってコントロール可能です。
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「出ていないときは薬をやめてもいい?」と思いがちですが、自己判断で中止すると再発することも。
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特に慢性的なタイプ(6週間以上続く)では、しっかりと継続治療を行うことが再発予防につながります。
じんましんでお悩みの方は、まずはご相談ください。
症状の出方やライフスタイルに合わせて、最適な治療をご提案いたします。
お気軽にご相談くださいませ。